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プラットフォーム型ビジネスの最先端。B2B業界におけるマーケットプレイスの可能性と成功事例

- 2024年8月2日
プラットフォーム型ビジネスの最先端。B2B業界におけるマーケットプレイスの可能性と成功事例 某大手電機メーカー様の社内向けセミナーレポート

2024年7月某日、某大手電機メーカーの社員向けに開催された勉強会にて、B2B業界におけるECの動向について話すため、Mirakl代表の佐藤が講師として登壇しました。

当日は「プラットフォーム型ビジネスの実現を支援するSaaSベンダーから見た、成功事例とベストプラクティス」と題して1時間のセッションを実施。マーケットプレイスの基本概念やマーケットプレイスを活用したビジネスの成功事例などを紹介しました。勉強会は、セミナールームとオンライン配信のハイブリッドで行われ、参加者200名超えの大盛況となりました。

プラットフォーマーの基本的なビジネスモデルとは

直近10年ほどで台頭してきたプラットフォーマーと呼ばれる企業は、自社の資産だけではなく、休眠資産や他社の資産をうまく活用するエコシステムを築くことで、ビジネスを成長させてきました。たとえば、Uberはタクシーを持たないタクシー会社であり、Airbnbはホテルを持たないホテルチェーンです。GAFAと呼ばれる大手プラットフォーマーも同様で、たとえばAppleはApp Storeは自社以外のアプリケーションもダウンロードできる場所を提供しています。

「いろいろな人たちが便益を得られる場を開放し、そこから手数料収入を得る。つまり、他社のリソースをうまく使ってビジネスモデルを組んでいくというのが、プラットフォーマーたちの基本的なビジネスモデルです」

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こうした中で、B2Bの購買におけるマーケットプレイスの使われ方には、ユニークな特徴があることがボストンコンサルティンググループ(BCG)のレポート (How B2B Marketplaces Are Rewriting the Rules of Trade)で言及されています。

「BCGのレポートによると、B2Bのバイヤーを対象にした顧客調査において、“バイヤーの約50%は、汎用的なB2Bマーケットプレイスよりもメーカーのマーケットプレイスで買い物をすることを積極的に好む”という結果が得られたそうです。要するに、B2Cでは、そこに行けば欲しいものが何らかの形で手に入る巨大プラットフォーマーが好まれる傾向にありますが、B2Bではそうではなく、メーカーから購入したいと思っていることがわかったのです」


B2Bのビジネスでマーケットプレイスが有用な理由

では、B2Bのビジネスを行う企業にとって、マーケットプレイスを運営するメリットとは何なのか。佐藤は、次の4点を挙げました。

「1つ目は、『顧客への選択肢の提供』です。B2Bのビジネスでは、顧客のペルソナやプロファイルが結構明確にわかっています。そこで、そうした相手に向けて商品のラインナップを拡充し、しっかりと提供していくことができます。

2つ目は、『シンプルな運用』。マーケットプレイスでB2Cの買い物をすることにはほとんどの人が慣れているので、それを踏襲したシンプルなインターフェースにすることで、使いやすさを感じてもらうことができます。

3つ目は、『経済的メリット』。マーケットプレイスは在庫を持たず、商品が売れたときに手数料をもらうというビジネスモデルです。そのため、在庫リスクを抱えることなく運営できます。

4つ目は、『データインサイト』。プラットフォーマーは、自社のプラットフォーム上で起こったことをすべてデータとしてトラックすることができます。取得したあらゆるデータを分析することができるため、そこから次の製品開発に生かしたり、新たな在庫を増やしたりと、データドリブンな意思決定ができるようになります。これが、既存の巨大プラットフォーマーの強さの秘訣でもあるわけです」

加えて、DXという視点においても、マーケットプレイスの導入によるポジティブな影響があると言います。

「たとえば、最適化です。サプライヤーや子会社が多くある場合、それらの商品や在庫を一つのマーケットプレイスに集約することで管理しやすくし、業務の効率化につなげることができます。他にも、顧客の調達ニーズにワンストップで応える、数百万種類の商品を追加のロジスティクス投資なしに取り揃えるといったイノベーションにも取り組んでいくことができます」

プラットフォームビジネスは、中心となるプラットフォーム(マーケットプレイス)に、その運営者である企業、マーケットプレイスに商品を出品するセラー、商品を購買する顧客の3者が集まるエコシステムだと言えます。その中で、お金やモノの流れは、在庫の仕入れモデルとは少々異なります。

「マーケットプレイスで顧客がセラーの出品している商品を購入して決済すると、まずはその全額が運営者に支払われます。その後、運営者がセラーとの間であらかじめ取り決めしていた料率分の手数料を引き、残りの金額をセラーにバックします。たとえば、1000円の商品を顧客が購入したとすると、運営者はいったん1000円を受け取り、それが10%の料率であれば100円だけを手元に残して、900円をセラーに戻すという流れです。

もちろん運営者の最終的な売上は手数料分のみですが、キャッシュとしては全額入ってくるので、キャッシュが非常にリッチに回るビジネスができることが大きな特徴だと言えます」


B2Bビジネスにおけるマーケットプレイスの活用事例

続いて佐藤は、実際のマーケットプレイスの運用事例を紹介しました。1つ目は、電機メーカーの「SIEMENS」です。その中でも、電車に関する製品を取り扱っている事業部がマーケットプレイスを運営しています。

「SIEMENSがマーケットプレイスを導入したのは、自社で提供している車両の部品以外にも、車両の運営に必要なものを取り揃えたいという理由からでした。車両の運営に関する何かが必要になったときに、SIEMENSのマーケットプレイスに来れば全てそこにあり、かつSIEMENSの品質水準をクリアしているものが購入できるようにしたいと考えたのです」

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B2Bの購買でメーカーの取り扱う商品が人気なのは、クオリティに対する一定の信頼があるからだと考えられます。

「特に車両は人命に関わる部分なので、商品のクオリティの高さが重視されます。SIEMENSの自社商品と全く同じレベルではないにせよ、SIEMENSが提供しているのなら、他のサイトで購入するよりも安心だろうということになるでしょうし、実際にSIEMENSもそうした品質のコントロールを行っています」

さらにSIEMENSは、部品を簡単に購入できるようにするために、マーケットプレイスの購入の仕組みにも工夫を施しています。

「交換したい部品を写真に撮って、独自開発のモバイルアプリで画像検索をかけると、同様の商品がヒットするようになっています。部品の型番を調べて検索をかけるという手間が省略できるため、メンテナンスの作業効率を大幅に上げることができるようになっているわけです。画像検索で商品を探せる仕組みを用意するには、その前提となるデータが大量に必要になるので、そこにマーケットプレイスの技術を使っていただいています」

次に紹介したのは、航空宇宙企業「エアバス」の子会社で、航空部品などを扱う「SATAIR」です。こちらもSIEMENSと同様にエアバス本体をはじめとする顧客ニーズに広く応えるため、自社で取り扱っている電子部品の他にも商材を揃えたり、さらには中古・再生品も扱ったりと、マーケットプレイスを活用して事業を拡張しています。

「安全品質が求められる領域で中古・再生品を含めた展開をしていることが、一つの大きな特徴かなと思います。ヨーロッパは特に環境に対する意識が高く、中古・再生品に対するニーズも高まっているので、『自分たちがやらなければ、他の誰かがやってしまう』という危機意識もあるようです。多くのメーカーさんが同じような意識を持たれていて、ワンストップショップをいかに自社で展開していくかというのが、非常に大きなトピックになっています」

フランスの「ANIEL」は、自動車整備会社向けのマーケットプレイスを展開。フランスに多くある小さな自動車整備会社がここに来れば、全ての必要物品を揃えられるという品揃えを行っています。

「ここでのポイントも、再生品です。一部の部品が壊れたから廃車にせざるを得ないけれど、それ以外の部品は使えるといった場合に、その部品の再利用を推進する仕組みをつくっています。自動車のアフターマーケットには非常に大きな規模があり、2023年度のマーケットプレイス事業の成長率も30%と大きく伸びています。また、自動車の整備において、どのようなタイミングで誰が何を買っているのかというデータが手に入るというのも、アニエルの大きな強みになっているのではないでしょうか」

ヨーロッパにおけるコカ・コーラのボトラーズである「COCA-COLA HELLENIC BOTTLING COMPANY」は、既存顧客のホテルやレストラン、カフェなどに対して、自社製品外にも調理器具や食器、什器など、食品以外の必要物品がワンストップで購入できるマーケットプレイスを展開しています。

「こちらの事例も、自社の顧客像を明確にした上で、ワンストップショップを展開しています。さらに、そこで得られたデータを次のビジネスにつなげていく。これがプラットフォーマーの基本的なビジネスモデルです」


自社マーケットプレイスで巨大プラットフォーマーの攻勢に勝つ

Miraklの創業者は、「プラットフォーム技術の民主化」を唱え、今まではGAFAのような巨大プラットフォーマーしか持ちえなかった技術を多くの企業が使えるようにすることで、市場の可能性を広げることができると考えています。

Miraklのお客様はグローバルで450社。米国の老舗百貨店「Macy's」や米国のスーパーマーケットチェーン「Kroger」、日本国内にも店舗を持つ「PREMIUM OUTLETS」などに利用いただいています。最近は、日本で「ニトリ」もMiraklの導入を発表し、メディアで話題になりました。

「海外では、特にオンラインで巨大プラットフォーマーに攻勢をかけられて苦戦していたような企業に多く使っていただいている印象です」

提供しているソリューションはマーケットプレイスのほか、広告を掲載するリテールアドやセラーさんにお金をバックするペイアウトの機能、セラーになり得る企業をリスト化したコネクトなどもあります。それを使えば、他社のマーケットプレイスのセラーを自社のマーケットプレイスでもチョイスするといったことが実現できます。

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「既存のプラットフォーマーは、こうしたコア技術を絶対に外部には公開しません。だからと言って、一般的な企業がマーケットプレイスをゼロから開発しようとしても、おそらく事業にITコストが全く見合わないということになるでしょう。そこで、我々がその技術をSaaSとして多くの企業が使いやすいように提供していくことで、既存プラットフォーマーと同じようなビジネス形態が展開できるようにしています。それが、Miraklの考えるプラットフォームの民主化です」


マーケットプレイス導入に付随するコストは

最後に、佐藤は質疑応答を行いました。「Miraklソリューションを導入した場合、Miraklのライセンス使用料以外に、かかると考えられるコストはあるか」という質問に対して、佐藤は次のように回答しました。

「たとえば、我々はサイトの見た目やカート、決済などのフロント部分はソリューションとして提供していないので、そうしたシステムをお持ちでなければ、その導入コストがかかります。ただ、すでに運用しているECサイトなどがあれば、システムに関しては特に追加で必要となるコストはありません。

システム以外の部分では、セラーさんに声を掛けてリクルートするといったアクションが必要になる場合があるため、それが可能なケイパビリティがなければ、セラーさんに向き合う部隊の立ち上げや組織の変更、あるいはそれを代行してくれる会社にかかるコストなどが必要になります」

参加者は、セラーに向き合う組織が必要になるという話に納得した様子で、「マーケットプレイスのレピュテーションの維持を考えれば、自社の価値観やブランド、お客様の求める品質基準に相応しいセラーを選ぶ必要がありそうですよね。その目利きが非常に大事なのかなと思いました」と語りました。

佐藤も「おっしゃる通りだと思います」と首肯。続けて、「どのようなスコープでセラーさんを募るかというのは、自社でマーケットプレイスを運用する大義名分をどのように持つかということに、非常に密接にリンクしてくると思っています」と話しました。

その後も、現地の会場やオンラインにかかわらず、参加者からは海外の状況から技術的な内容まで、次々と質問が上がりました。終始興味を持って聞いていただけたような雰囲気の中で、一連の講演を終えることができました。




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